







**「秋の面影」**
風が梢を揺らす午後
赤く染まる山の稜線
足元に広がるコスモスの波
あなたの気配が まだ残る
指先に触れた 薄紅の花
そっと囁くように揺れて
あなたがここにいた証を
優しく 映し出している
呼びかける声は 風に溶けて
答えのない空に 舞い上がる
もしも届くなら ただ一言
「変わらずに ここにいます」
川のせせらぎ 遠く響き
滝のしぶきが 頬を濡らす
過ぎた季節を辿るたび
心の奥で 揺れる影
何度も振り返る帰り道
同じ景色が 違って見える
それでも私はここに来る
あなたが愛した場所だから
呼びかける声は 風に溶けて
答えのない空に 舞い上がる
もしも届くなら ただ一言
「変わらずに ここにいます」
沈む陽が 山を染めて
金色の光が降り注ぐ
「また来るね」とつぶやけば
木々がそっと 頷いた
秋の風が 背中を押す
コスモスが揺れて 見送るように
ここでまた 会える日まで
私はそっと 歩き出す
投稿者 | スレッド |
---|