**「霧の中の約束」**

錆びたポストに鍵を隠し  
手紙一枚だけ残した日  
古い登山道、苔むした石  
足元には記憶の破片  

川辺の桜、散る花びら  
冷たい水が心を映す  
あの湯気の立つ温泉宿で  
交(か)わした約束、まだ胸に  

霧の中で見つけたもの  
温もりと嘘、絡まる指先  
「忘れないで」と囁く声  
耳元で、今も響いている  

石段の途中、転がる靴  
笑い声と涙が交差した  
小さな神社、賽銭箱に  
願いの代わり、名前を書いた  

裏山の展望台から見た  
町の光が揺れる黄昏  
「一緒にいよう」と呟いたけど  
その答えは風に溶けた  

霧の向こうで隠れた顔  
笑(ほほえ)みと戸惑い、触れた頬  
「また会おう」と残した言葉  
胸の奥で今も燃えている  

深い森の中、赤い傘  
雨音がふたりを包んだ日  
濡れた地図には行き止まり  
それでも進む道があった  

最後に交わした温かい茶碗  
湯気とともに夢も消え去る  
だけどあの灯り、小屋の窓  
今も心の中で揺れてる  

霧の中に埋もれた過去  
拾い集める、消えかけた記憶  
「愛している」と言えた夜が  
私の唯一の光になる  

錆びたポストに触れる指  
手紙の言葉が風に踊る  
あの日の山の霧の中で  
あなたを探し続ける私