








**「氷壁の彼方へ」**
夜明けの光は 届かぬ壁に
鋼のような氷が 立ちはだかる
「ここから先は帰れない」と
風が囁き 谷が呼ぶ
ロープに繋いだ命
震える手で結び直す
「まだ大丈夫か」 その問いに
頷くだけで 声は凍りつく
氷の裂け目に足をかけ
斜面が唸り 岩が崩れる
「離すな、絶対に」
その叫びが 雪に吸い込まれてゆく
ああ 氷壁の彼方へ
誰も辿り着けぬ場所でも
君と夢見た道だから
嵐が砕いても 闇が裂いても
最後の瞬間まで 私は登り続ける
白の世界に 足跡は消え
ただ心だけが 燃えている
「戻れ」
「いや、進め」
言葉より深い沈黙が 互いを繋ぐ
雪煙の向こうに 君の姿
手を伸ばしても 触れられない
墜ちてゆく影に 声を張り裂けても
谷の底に飲まれていく
ああ 氷壁の彼方へ
血も涙も凍りついても
君と交わした誓いが
天を突き破り 空を焦がす
最後の瞬間まで 私は登り続ける
「ここで終わるなら、それでいい」
叫んだ声が嵐を裂く
砕けたロープ 飛び散る雪
君の瞳が最後に残したもの
それは恐れではなく
燃え尽きるまでの希望だった
氷壁の彼方へ…
私は登り続ける…
君の夢を背にして…
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