**「山のうたを、もういちど」**
ザックの重さに 秋の陽が滲んで
靴の泥が 昨日の夢を映してる
風が頬を撫でて 君が笑った
「また登れるね」って
小さくつぶやいた
木の葉がカサリと 道を案内して
忘れかけた名前を 呼ぶように響く
怒ったことも 泣いた夜も
ぜんぶこの斜面のどこかに眠ってる
肩をすくめて 振り返る君の
白い息が 朝日にほどける
その背中に 何度も恋をした
登りつめても また登りたい
小石を踏む音が 拍になる
君の笑い声が メロディになる
「ゆっくりでいいよ」と言いながら
先を行く君が好きだった
ありがとうって まだ言えなくて
風の音に紛れてしまった言葉
悔しさも 涙も 足跡に変えて
君と見た空が まだ胸で鳴ってる
転んだ心を抱えて登る
日暮れの尾根に残る影
あぁ、今も息を合わせてる
君と僕のリズムで
木々のすきまに見える街の灯り
遠い昔の 僕らの家みたい
幼い声が 風に溶けて
笑いながら どこかへ帰ってく
「もう無理かな」って君が言うたび
空はやさしく肩を抱いた
歳を重ねるたびに
山は深く 愛は静かになる
君の手を また握りしめる
冷たさに 命を感じる
ここまで来れたのは
たぶん奇跡じゃなくて、選んだ道だね
空に一筋の雲が流れて
まるで「もう少し」と言ってるみたい
あと一歩だけ、一緒に
ありがとうって言わせてよ
今日も君のあとを追う
風が笑う 木の葉が歌う
「まだ登れるよ」って
山はただそこにある
僕らが消えても 朝は昇る
それでも僕は願ってる
もう一度 君と登りたい
——また登ろう
この小さな丘のつづきへ。
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