








**「風に置いていく道」**
朝日が林道をそっと撫でる
風と土の匂いを胸に抱き
夫と妻の手を重ねて
まだ誰も歩いていない道を踏み出す
カラマツの急登、息が切れる
「大丈夫?」君の声に笑う僕
岩を踏みしめ、一歩ずつ
雲が肩まで降りてくる
二か月ぶりの体に重さを感じても
心は少しずつ空に向かう
分岐の小さな木の標識
新登山口が指す先
尾根の向こう、霞む山並み
光が時折、僕らの肩を叩く
ここで風を抱きしめよう
霧の向こうに僕らの笑顔を描こう
山頂まであと少しのこの瞬間
疲れも不安も手放して
すべてをこの空に Give it away
心の奥でそっと叫ぶんだ
Give it away, Give it away
権現ノ庭の小湿原で
小鳥が飛び交う音が二人を包む
手を伸ばせば届きそうな雲
でも大切なのは足元の一歩
互いの呼吸を感じながら
少しずつ山の心に溶けていく
避難小屋の木の扉に触れる
「休もうか」君の笑顔が疲れを溶かす
湿った木道をそっと踏みしめ
小さな花や苔の香りに気づく
振り返れば来た道、雲で隠れて
それでも二人の足跡は確かに残る
反射板の台地に視界が開ける
霧が少し途切れ、遠くの山並み
槍・穂高がかすかに浮かぶ
ここで風を抱きしめよう
山の景色も、笑顔も僕らのもの
山に、Give it away
疲れも不安も手放して
Give it away, Give it away
風が葉を揺らし、雲が流れる
僕らの笑い声も風に溶ける
ストックを岩に置き、息を整えて
膝が痛むけど、手を取って
「もう少しだよ」と微笑む君
振り返ると霧の中に
僕らだけの小さな道が光る
疲れも恐れも、笑い声に変わる
ここで風を抱きしめよう
霧と強風も僕らの物語
山頂から下山までのこの道も
愛と勇気で歩き抜こう
Give it away, Give it away
心のすべて、風に委ねて
今、山に、Give it away
林道を抜け、ゲートを閉める
疲れた体も、笑顔のまま
手を握り、今日の空に祈る
「また登ろうね…
Give it away, Give it away
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