








**「稜線の途中で」**
ザック重すぎって 君は笑うけど
地図を広げる手は やけに真剣で
足元の落ち葉が カサカサ鳴るたび
「なんかペースずれてる」って 茶化す君
息が白く揺れて 視線だけが重なる
言葉は少し足りなくて 空気ばっか薄い
寄り道ばかりの 二人の進み方でも
すれ違ったら また追いかければいい
山の影に重なる 僕らの影が
消えずに残ってたら それでいいよね
君はピリ辛苦手で コンビニおにぎりは梅
写真は必ず 少し斜めから
「ほんと臆病だよね」なんて 自分で言うくせに
ガレ場に真っ先に飛び込むのは いつも君
「足、笑ってきたからさ なんか歌ってよ」
半分冗談みたいに 夜の稜線で言う
寄り道ばかりの 二人の進み方でも
噛み合わないなら 転んで笑えばいい
山の風に叫んだ 名前の響きが
秋の星空にまだ 溶けずに残るなら
「置いてけよ」って強がる声と
「連れてって」って心の声が
ぐちゃぐちゃに絡んで 夜風に飛んでく
君は意地っ張りで 甘えるの下手で
それでも僕は その全部好きだった
テントの灯りが揺れて 二人の影が細くなる
君は青いパーカーを 僕のザックにそっとしまった
「もう山はいいや」なんて 笑って言うけど
瞳はまだ 稜線の先を追ってる
暗闇に目が慣れてくほど
君の輪郭は 街の灯みたいに遠ざかる
別々の道を歩いても あの日の息遣いがある
すれ違った谷も すり減った想いも
僕らの青春の一部になる
別れの向こうでまた 薄い光が灯る
再生は派手じゃなくて 静かだけど
朝焼けの稜線みたいに はっきりと始まる
君の青いパーカー まだザックに残ってる
返す日まできっと 登り方は忘れない
「戻ろう」でも「行こう」でもなく
息を合わせる練習を またいつか
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