








**「山に語る声」**
ゆっくりと始まる夜明け前の山
霧が包む 孤独の影に
老いた足跡 岩を越えて
ひとり語る 風にまかせて
あの山は昔を知ってる
声なき言葉で 語りかける
冷たい石に触れるたびに
忘れたはずの名前を呼ぶ
流れゆく雲を見上げて
時の輪郭をなぞるたび
心の奥 まだ揺れてる
歩いた日々の答えを探して
山よ 聞こえるか
この胸の叫びを
風に消されぬように
いま 歌に変えて
過ぎし日を 抱きしめる
ただ生きてきた証を
誰かのためじゃなかった
ただ登りたかっただけ
でも気づけば いつのまにか
あの眼差しが 背を押してた
夕焼けに染まる影法師
届かぬ想いが 風に舞う
けれど心 まだ信じてる
あの頂に何かがあると
山よ 教えてくれ
孤独の意味を
涙を飲み込んでも
声が響くなら
もう怖くはないんだ
ここにいると叫べる
やがて夜が明けて
陽はまた昇る
影は消え 風だけが
そっと背中を押す
山よ ありがとう
もう迷わないよ
名もなき足跡でも
歌は残るだろう
風とともに 空へ昇れ
語り継がれるように
(ひとすじの風が山を越える)
(それが彼の声だった)
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