








**「山影」**
いつの日か あの山の向こうへ
あなたはただ 小さく手を振った
笑っていた 何も言わず
私はそれを 信じて待った
ゆらめく空 朝靄の中で
あなたの影を 探し続けた
岩肌の冷たさ 濡れた靴音
季節が変わっても 風はまだ優しい
帰らぬ声を 信じたかった
山に抱かれて 夢を見ていると
誰かが言った けれど私は
あなたの名前を 呼び続けてる
山影に 溶けたぬくもり
追いかけても 届かない手
終わりを知らぬ 物語のように
私は今も ここにいるの
あなたを 待ち続けている
木の葉の色が 変わってゆくたび
私は少しずつ あなたを覚えなおす
「また戻るよ」その声だけが
今も胸の奥 消えずに残る
時には夢で 出逢えるけど
触れられないまま 朝が来るの
名もない祠(ほこら)に 祈る言葉
風に散っても あなたを想う
山影に 響く心よ
あなたは今 どこにいるの
凍える空に 名を叫んでも
答えはただ 沈黙のまま
それでも私は 信じてる
ここでずっと 待っている
帰ってきて
いつか また──
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