








**「あの夏の音、君の声」**
ねえ 聞こえてる? テントの端を揺らす風の音
夜明け前の空が うっすらオレンジに染まりはじめた
クマよけの鈴 ザックにぶら下げて また今日が始まる
昨日の焚き火の匂いが 服に染みついてるけど それも好き
「都会にいたらさ、朝って無音すぎて怖いよね」
って君が笑ったの、なんか わかる気がした
ここじゃ、風も 鳥も 川も 全部しゃべってるみたいで
一人でいるのに 一人じゃないって思えたんだ
あの夏の音、君の声 まだ耳に残ってるよ
「大丈夫」って、何回も言ってたくせに 泣きそうな目してたね
地図のない場所で生きてく強さと
誰にも見せない弱さを
ちゃんと持ってた君が
今どこにいるのか 本気で気になってるんだ
昼間はおにぎりをほおばりながら 笑い合ってたのに
夕方の長い影の中 誰もがちょっと黙ってた
陽が沈む直前って 妙に胸がざわつくよね
大事なものほど いつも声にできなくて 後から悔しくなる
「この景色、誰にも見せたくない」
ってポツリとつぶやいた君の横顔
風の音でかき消されたけど
あれ、たぶん本音だったんだろうな
あの夏の空、終わらないで って願ってたのは僕の方さ
木々のざわめきも、君の笑い声も 風と混じって遠くへ行った
逃げるように生きてたはずの僕らが
気づいたんだ、何を守りたかったのか
それが君で この土地で
それだけは今もずっと変わってない
あの夏の音、君の声 今でもふと思い出す
言葉より確かな気配で そこにいた君の全部が
消えないんだよ 消したくないよ
たとえ もう戻れないとしても
あの空気と あの温度と
君のいた夏を 胸に抱えてる
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