








**「山の向こう」**
あの日の朝はただ静かで
空は抜けるほど青かったんだ
何かを忘れたくて 登りはじめた
理由なんて うまく言えなかった
ザクザク足元に響く音
風が心の奥までくすぐって
「どこまで行くの?」って 誰かに聞かれたようで
黙って笑って、先を見た
一人じゃないって言えるように
何か見つけたくて
振り返れば 足跡ばっかで
答えなんてなかったけど
山の向こうに何があるかなんて
知らなくていいと思ってた
だけどあんたが笑った顔で
全部変わってしまったんだよ
迷ったっていいじゃんか
立ち止まっても、泣いても
そのとき君がいたことだけ
ちゃんと覚えてるから
あたしも実は逃げてきたの
言えなかったこと、山ほどあって
「登れば何か変わるかも」って
そう思ってたのに 転んだだけで
それでもあんたが手を差し出して
笑って「ドンマイ」って
なんかさ、泣けてきて
「ここにいてもいい」って思えた
山の向こうに何があるかなんて
誰にも分かんないけど
それでも前に歩いてけるって
今ならちょっと思えるんだ
暗くなった空の下で
手探りで進んでたけど
気づけば君の声がちゃんと
胸の奥で光ってたんだ
山の向こうにあるのはたぶん
答えじゃなくて「思い出」なんだ
一緒に笑ったあの時間が
今も背中を押してくれてる
どこまでも続く坂道を
ゆっくりでも登っていこう
また君に会える気がしてる
雲の隙間 光が差すよ
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