








**「山よ、聞いてくれ」**
君が言った 「今日は山へ行こう」
朝焼けの匂いに 急かされるように
コンビニでおにぎりを二つ買って
何気なく 始まった一日だったよね
靴ひもを結ぶ 君の横顔が
やけに真剣で ちょっと笑えて
「登りきれるかな」って僕が言うと
「風に聞いてみたら?」って笑う
山よ、僕らを見ててくれ
誰も知らない 今日の話を
ちっぽけな願いを背負って
僕らは登ってる 迷いながらでも
空の近くで笑えたら それでいいよ
途中で見つけた小さな花に
名前も知らずに立ち止まる君
「すごいね」って僕が言うと
「自然ってすごいんだよ」って
ザックを下ろして 休んだ岩の上
風が僕らの会話を奪ってく
何も言わなくても 平気な時間が
やけに胸に残る 午後の斜面
山よ、僕らを導いてくれ
不器用な足取りのままで
それでも、ひとつずつ進んで
見たことない景色に会いたい
君となら どんな登り坂も
「ねえ、あの雲、鹿の形に見えない?」
「……ああ、見えるような、見えないような」
「こういう時間が、帰り道で一番思い出すんだよ」
「じゃあ、ちゃんと覚えていよう」
山よ、ありがとう 僕らの一日を
何も変わらないようで 変わっていた
心の奥に置いていく景色
誰に話さなくても 伝わるように
今日を忘れない 君といたこの道を
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