








**「夜風と線香花火」**
夜風が肌に絡まる 七月の路地裏
団地のベランダ 誰かの笑い声がしてる
冷えた瓶のコーラ片手に 君を待っていた
光るスマホの画面だけが 時間を教えてる
ひとつ前の電車で 帰ったのかもしれない
最後まで言えなかった 言葉が胸に残る
「今度はちゃんと話すね」って
小さな嘘が 今も胸に刺さってる
線香花火が落ちるときみたいに
言えなかったことが ポツリ落ちて
追いつけない君の背中が
夏の夜に ほどけていく気がした
公園のブランコ揺れる 誰もいない時間帯
君が好きだった花の香り どこからか漂って
ビーチサンダルで歩く道 アスファルトがまだ熱い
二人の足跡も 夜には見えなくなる
「無理しないで」って
君が最後に言った言葉
その声を思い出すたび
何もかも置き去りにしてしまった気がする
線香花火が落ちる瞬間に
何かが終わる音が 確かに聞こえて
君の名前が夏に溶けてく
この夜風だけが まだそばにいる
「またね」じゃないって わかってた
ほんとはあれが最後だった
笑って手を振った君が
あんなに遠く見えたのはなぜ
線香花火が消えた夜にも
まだ君の温もりが残ってる
さよならも言えなかった夏を
今も歩いてる ひとりきりで
「それじゃあね」
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