**「稜線の向こう、あなたの声」**
白く砕けた 氷の壁を
あなたは笑って 手を差し伸べた
ゴーグル越しの 瞳の奥
嵐が来ること わかっていたのに
ザイルを結ぶ 指の震えを
強く包む その掌
稜線の向こう 陽が沈みかけ
影が長く 私たちを追う
風は歌う 古い物語
この山に 還らなかった二人の
あなたは笑う 「大丈夫だ」って
でも唇は 青くかじかんでた
吹雪が消す 足跡の道
コンパスも 嘘をつき始める
私の名前 風に呼ばれて
答えた声は 雪に飲まれた
酸素の匂い 金属の味
薄くなる空 胸が軋んで
あなたの背中 遠く滲んで
ザイルを引く手 もう感じない
夜明けは来るの? この稜線にも
星はまだ 雲の奥
約束したじゃない 春になったら
あの川沿いを 二人で歩くって
あなたの声が 風に溶けても
私は登る その続きを
白い世界で ひとり残っても
ザイルの結び目 ほどけはしない
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