







**「夜叉の峠」**
袖にすがった 影ひとつ
言えぬ名を 舌の奥
火照る指 ひき裂いて
あの夜(よ)を越えれば 罪でしょうか
紅(くれない)に染まる 山の端(は)に
面影が 溶けてゆく
つむじ風 追いかけて
あなたの嘘まで 抱きしめました
恋は罠ですか 業(ごう)ですか
峠道 戻れない
心ひとつ 身体(からだ)ひとつ
裂いてもなお あなたが欲しい
泣いて泣いて 夜叉の峠
越えれば終わると 信じたの
でもね この胸 狂い咲き
あゝ 逢いたさに 爪を立てるの
風よ教えて 何を赦せば
私 女でいられるのか
焚火の影に ふたりいた
誰にも言えぬ さだめでも
笑ってた 泣いていた
燃えるその目が 忘れられない
戻れぬ河を 手繰り寄せ
この肌に 残る香(にお)い
儚(はかな)ささえ 罪になる
女という名の 十字を背負い
咲いて咲いて 夜叉の峠
散ると知りつつ 咲く花よ
愛を叫び 影となる
あゝ あなたしか 見えはしないの
月よ照らして 最後の嘘も
すべて 抱いて逝(ゆ)かせてよ
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