








**「羽鮒の風の向こうへ」**
秋の風が ふたりの肩を押す
朝霧を抜けて 里山の道へ
蜘蛛の巣を払いながら笑う君
「今日の風は優しいね」と 僕はうなずいた
栗の実を踏んで ザクッと音がした
羽鮒用水のせせらぎが遠くで歌う
無人販売の棚に 並ぶ里の夢
「どれも手作りだね」 君の声がやわらかい
森山の坂道で 少し息を切らしながら
僕らは未来のことを話してた
「この先も一緒に行けるかな」
そんな言葉に 雲がかかった
道標が ゆらいで見えた
分岐を間違えそうになって
手を伸ばした君の指先が
秋の光をつかんでた
羽鮒の風が 背中を押す
夢の途中で 転んでも
あの日の約束は消えない
「いつかこの山を越えて行こう」
それだけで十分だった
羽鮒山の三角点 藪の中に眠ってる
誰も知らない場所で 君が笑ってる
「見えなくても ここにいる」って
その言葉が胸に刺さる
展望台の風が 二人を包み
富士の裾野が 雲の隙間から顔を出す
「やっと見えたね」
君の頬を撫でる風が
すべてを許すようだった
僕らの道は 舗装と土のあいだ
揺れる心を隠せずに
でも君の足跡が 僕の背を押す
羽鮒用水に映る二人の影
羽鮒の風が 教えてくれた
夢は簡単には叶わないけど
迷ってもいい 止まらなければいい
「歩くことが生きること」
それを君が教えてくれた
「見えない景色ほど 美しいんだね」
君の声が風に溶けた
羽鮒の風の向こうへ 僕らは行く
明日が見えなくても 君がいればいい
蜘蛛の巣の光 道しるべのように
森山の頂で 誓った約束を抱いて
羽鮒の風が 背中を押す
夢と愛を両手に もう一度歩き出す
「終わりじゃない、始まりなんだ」
雲を抜けた空の下で 君が笑った
秋の風が 静かに通り過ぎる
二人の足跡が ひとつの道になる
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