








**「白に溶ける道しるべ」**
夜明け前の峠 雪はまだ固く
足音が 冷たい空気に反響する
霧の中 遠くで鳥が鳴いた
「戻るべき?」と 息を白く吐く
木々の間に 錆びた鳥居が立つ
凍った鈴が 風に揺れてチリンと鳴る
枯れ葉が靴底にくっついて カサカサ音を立てる
「嘘じゃないだろ?」 振り返った君の笑顔
雪に反射して まだ淡く光ってる
あぁ この道しるべ どこへ導くの?
白に包まれて 輪郭も溶けてく
祈りひとつ 息に乗せれば
風に攫われて 星も見えなくなる
霧に濡れた石段 足元を冷たく締め付ける
苔むした岩肌に 指先が触れる感触
「まだ間に合うよ」 誰かの囁きが木々の間から
でも返事は 冷たい霧にかき消される
あぁ あの日の声よ もう一度呼んで
この白の向こう 道を照らして
祈りを裂いても 消えない光を
信じたいんだ 君がいるから
雪解けの匂い 湿った土の匂い
心臓が跳ねる 迷いながらも進む
もう戻れない 戻らない
白に沈んでも 歩くんだ
春を待つ山に 声を投げた
応えはなくて ただ冷たい風
霧が足元を隠しても
僕は歩く
君が見てるから
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