








**「まだ途中だぜ」**
お前と… 出会ったのは
ええと… そうだよ 春の終わりだったな
あの時の空は やけに青くて
何もかも 全部 これからだった
道もねえし 地図もねえし
ただ前に 足を出すだけで
もう楽しくてしょうがなくて
…でも そればっかじゃ なかったんだよな
山はな… 高ぇんだよ
谷はな… 深ぇんだよ
風がな… 泣かせる夜が あるんだよ
だけど 二人で登ればさ
景色は変わるんだ 全然違うんだ
…まだ途中だぜ 頂なんて まだずっと先だよな
嵐にやられて テント吹っ飛んで
道も間違えて ぐるぐる回って
お前が 先に泣くもんだから
俺まで… 泣きたくなったんだよ
でもさ 朝が来りゃ 笑ってんだよな
米を炊いて 湯気の向こうに
また 今日の空が広がってて
…そうだよ 一人より 二人のほうが 強ぇんだ
山はな… やっぱ高ぇよ
谷はな… やっぱ深ぇよ
吹雪がな… 心まで埋める夜もある
だけど 二人で登ればな
道が見えるんだよ お前も見えてんだろ
まだ途中だぜ 頂はまだ先だ
子どもが生まれてな…
荷物がまた増えてさ
背中のザック もうパンパンで
でもよ その重さがな…
俺たちの歩いてきた 全部なんだよな
山はな… 高ぇし 谷は深ぇ
これからも きっといろんな天気になる
でもよ お前と行けば それでいいんだよ
まだ途中だぜ 頂はまだ… まだずっと先だ
まだ先だ…
まだ先だなぁ…
…行こうぜ
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