**「羽根のない夜に」**
たぶん、涙ではなかった
頬をすべったのは 季節の切れ端
名前を失くした夜のなか
わたしは わたしを乗せて ゆっくり遠ざかる
鞄には 思い出は入れていない
代わりに まだ温かい沈黙を詰めた
街灯が滲むのは
目が覚めたせいだと思いたかった
わたしは今 羽根のない鳥
飛べないまま 空を忘れて
それでも 風に問いかけてる
あなたに聞こえない声で
行き先なんて 最初からなかった
あるのは 「もう戻れない」という未来
手を振った駅の空が
どこまでも 残酷に澄んでいた
わたしは今 影のない影
光を拒む場所に立って
それでも 愛を手放せなくて
手ぶらで ただ祈ってる
あの窓に映った自分を
あなたは見ただろうか
黙っていても 伝わるものなんて
幻想だったのに
この夜が朝になっても
バスは止まらない
わたしだけが知ってる
「さよなら」を重ねて 生きていくこと
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