








**「ある日、東京で」**
スマホの光が 部屋を照らして
音のない夜に 浮かぶ誰かの影
街のざわめきは 遠い夢のようで
今日が始まる音は どこにもなかった
夜のスマホを 指でなぞる
屋上から 落ちた誰かの話
知らない名前 けどどこか懐かしい
最後の投稿 みんなが笑ってる
コメント欄に 並ぶ嘘と推測
誰も 本当を知りたくない
スクロールして 次の悲劇へ
心は 何も感じなくなった
ベッドの隙間に 夢を置いたまま
アイロンのかかってないシャツを羽織る
エレベーター また逃して
自販機の缶コーヒー ぬるくなってた
イヤフォンの奥 機械の歌声
交差点で ぶつかる無言の人波
誰もがどこかに 急ぎながら
どこにも 本当は行きたくない
白い蛍光灯 書類の山
上司の声が ただの雑音
「君の目標は?」と聞かれて
ぼくはスマホに 文字を打ってた
意味もなく 数字を並べる
心の奥は どこかしら冷めてる
でも指は止められない
止めたら 存在も消えそうで
こんなはずじゃなかった ずっと前は
もっと 夢を語ってた
だけど今は 「お疲れ様」の一言で
すべてが終わる 一日が閉じる
心の奥で 小さく誰かが叫んでる
「ここじゃない」って 「こんなの嘘だ」って
でもその声は 通知に埋もれて
既読にされないまま 消えていった
昼の光が 壁ににじんで
見慣れた景色が 今日も流れてる
自動販売機の同じ味
満員電車の 同じ顔
帰り道のコンビニの灯り
同じ道 同じ歩幅
たぶん、明日も これを繰り返す
誰にも気づかれずに
遠くで誰かが ぼくを呼んだ
でも振り返っても そこには誰もいなかった
画面の中 笑う自分がいた
だけど それが誰かは わからなかった
空は晴れてるように見えたけど
色を覚えてはいなかった
今日も 何も起きなかった
ただ、夜が来ただけだった
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