







**「記憶のなかのキス」**
「…もうすぐ雨がやむわ」
「それって、やり直せるってこと?」
ささやくような
朝焼けのなかで
「愛してる」って
…まだ言えなかった
机に残った
あなたのインク
その匂いに
涙こぼしたの
揺れていたの
誰かの夢と
燃えていたの
私の声と
「また会える?」って
笑ってたよね
未来のことを
怖がってたのに
陽だまりのキスは
いまや幻(まぼろし)
「愛してる」は
昨日の残響(エコー)
時計の針が
私を追い越す
記憶のなかのキスだけが
まだ終わらないの
本の影から
あなたの笑顔
わざと遠回り
した午後三時
「ここにいて」って
声に出せずに
背中だけを
見送ったあの日
私はただ
ちゃんと伝えたかった
あなたじゃなきゃ
ダメだったってこと
でもね
言葉より先に
涙が喉をふさいだの
「…もしあの時…」
「忘れたいの、全部」
「それでも、愛してるの?」
太陽が昇るたび
名前を呼びたくなる
胸に残る
赤いレターの跡
涙もキスも
すべてが痛みでも
それでもあなたを
愛してたと歌うの
愛してた(アイシテタ)
忘れない(忘れない)
「じゃあね」って言ったあと
空が晴れたの
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