








**「ひと夏の声」**
ガジュマルの下 まどろんでる ノラ猫みたいに
誰かの夜に まぎれて 生きてたさぁ
白いシャツの袖が 風にふわり揺れるたんびに
ウチの夏が そっと 窓開けてきた
ナツキの声 潮風と混ざって
青の空へ 音もなく飛んでいった
「なんをそんなに 怖がってるの?」
問いかけた指先が 震えてた
ナツキや ウチの名前呼んでくれた夜
夏の終わりが やたら優しゅうて
戻れんこと わかってたくせに
その声が 胸の奥で こだましてる
水道筋の並木道 桃の香りただよって
裸足で駆け抜けた あの時間(とき)の中
言葉にならんまま 目をそらした午後
形にできん想いが 胸しめつけた
あの時ナツキが 三線(さんしん)つまびいた瞬間
止まってた時間(とき)が また動き出したわけさ
ナツキや ウチの名前呼んだあの瞬間
振り返ったら すでに遠くて
ナツキの背中に 夏が重なってた
忘れられんくせに 少しずつ忘れてく日々
やわらかな陽射しが まるで抱きしめるように
だけど もう 触れられんさぁ
ナツキの名前だけが 今も残ってる
ナツキや 今もウチの名前呼んでくれるなら
夜風にまぎれて そっとささやいてる
すれ違う前に 言えたはずの言葉
「ナツキの名前は ウチの声やった」
ノラ猫みたいに また一人きりで
ひと夏の声抱えて この島歩いてるさぁ
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