








**「灯籠(ともしび)の空へ」**
「ここは…
忘れられた寺町の外れ
鳥居の奥に、光はまだ…残ってるのか?」
静寂の下で生きていた
見せかけの信仰、沈黙の行列
本堂じゃなく、逃げ場所を探して
声も出せずに ただ 目を逸らした
境内に響く、鈴の音さえ
錆びついていた…心のように
けれどその日、耳に入ったんだ
誰かの歌、祈りじゃない――命だった
あの少女の声は 闇の裂け目だった
わたしを呼ぶ まだ名もない「真実」
一緒に歌えば なにか変わる気がして
足を踏み出した 恐怖の中へと
灯籠のようなその灯りが
わたしを導いた 破れた空の下
祈りじゃない、叫びでもない
音の中でしか 言えない言葉があった
「ここにいていいよ」と、君がくれた
それだけで世界は 崩れながらも
少しだけ 温かかった
誰も信じないことが防御だった
でも君は違った
「信じられなくてもいい」と
そう言って、背を向けずにいた
教室の机、カビ臭い床、破れた譜面
それでも、笑ってた
泣きながら歌ってた
そんな君を、見ていた
絶望は音になる
声にしていいんだ
錯綜する律動のなか
記憶が 蘇る
「助けて」って言えなかった日
「ごめんね」って言えなかった夜
すべて、音に変えて
砕けて 叫べ――
――これは終わりじゃない
これは、わたしの始まり
灯籠のようなその光が
孤独な心を 照らしてくれた
歌うことでしか 繋がれなかった
けれど確かに 君といた あの冬
「また会えるよ」なんて言わない
でも…忘れない
その声が、まだここに響いてる
わたしはまだ――歌ってる
「いま、どこで歌ってるの…?」
雨の音だけが 答えていた
それでも、わたしは 灯し続ける
いつか、空へ届くように
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