







**「蝉が鳴くまで」**
_今日もまた 同じ話をしてた_
_君の目を見ずに 僕は何かを取り繕う_
古い港町 木造の家
隙間風が昔話を連れてくる
「また来たの?」って 笑ったふりの声
セミが鳴いてる でもまだ午前九時
机の上の 開かない手紙
言葉を削って 感情も削った
僕は今も君のセリフを
リライトしては破り捨ててる
ガラス越し 君が見た空
僕の背中に 何も投げてこない
「君はまだ、そこにいるの?」
問いだけが 残ってる
蝉が鳴くまで ずっと 嘘を言い続けてた
本音を言えば 壊れそうで黙ってた
君の沈黙(サイレンス)が うるさくて仕方ない
今さら言葉で何が変わるっていうの?
踏み鳴らした畳に 残った影
あの日の夜 君が言ったんだ
「あなたはずっと、過去と会話してる」
…それが何だっていうんだよ?
浴衣姿の女の子が通る
夏祭りの気配 遠くの太鼓
僕たちにはもう そんなリズムじゃない
けど君の背中が踊って見えた
言いたいことが多すぎて
ひとつも言えない夜が
君の横顔を 切り取って
心に貼り付けた
蝉が鳴くまで ずっと 強がってた言葉が
もう一度だけ君に届く気がしてた
でも君はもう 別の朝を見てる
僕はまだ 昨日の夢を見てる
「忘れられないわけじゃない
ただ、忘れる理由がないだけ」
君がそう言った夏の朝
セミが止んだ瞬間 僕の中で何かも止まった
蝉が鳴き止む そのときだけ 真実に触れられる
言い訳の数だけ 愛が遠くなる
君の背中が沈む前に
ひとつだけ 言わせてくれ——
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