








**「花と影と、時を越えて」**
鐘の音が 濡れた石畳を伝って
僕をまた あの「始まり」へ引き戻す
茅葺き屋根の 祖父の古い家で
君が「また雨ね」と笑った
黒猫が傘をすり抜けた午後
時計の針だけ 逆さに進んだ
見えないものを掘り起こして
失くした昨日に もう一度触れる
でも気づいたんだ
奇跡は今しか生まれない
君を奪った時間に祈りを
影の中にも花が咲くなら
時の拾い人みたいに
記憶の中を彷徨って
この掌(て)で未来を選びたい
波打ち際に並んだ三つの足跡
僕、父、そしてまだ見ぬ息子
「やり直すな、生き直せ」
父が最期に残した言葉
もしもう一度 君に出会えるなら
君の涙の理由さえも 愛してしまうだろう
今がこんなに尊いと知るたび
時計の針は ゆっくりと止まって見える
君を奪った時間に祈りを
過去の影にも意味があるなら
掘り起こしたのは哀しみじゃない
いまを生き抜くための
優しさだったんだ
ただ、ただ君と、今日を生きたいんだ
雨が止んだ
君が差した 赤い傘だけが
時間の向こうで 揺れていた
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