








**「朝焼けのままで」**
畦道に立ってた 細い背中
都会の匂いがまだ 君に残ってた
軋む縁側で 湯呑みを拭いて
義母の声に ぎこちなく笑う
「こんなとこでいいの?」
誰かが言った 風の中の独り言
干した布団のにおいが 胸を締めつけた
君は この町にまだ馴染めず
でも俺より ずっと真っ直ぐだった
夕立ちが洗う 瓦屋根の色
心の泥だけ 残ったままで
父の咳払い ラジオの音
朝食のたび 言葉が固まっていく
「ありがとう」すら うまく言えず
ただ手を伸ばして 君の背を撫でた
「幸せってなに?」
君がポツリとつぶやいた
白いカーテンが揺れてた 夏の終わり
君は この家にまだ迷い
でも俺より 人を信じてた
祭囃子が遠くに聞こえる夜
君の寝息が 唯一の静けさ
未来なんて見えなくても
「ここで生きる」って君は言った
蝉の声 子供の笑い声
その全部を 覚えようとしてた
君は この暮らしに手を伸ばし
誰よりも なじもうとしてくれた
稲穂が揺れる 夕焼けの中で
俺だけが 立ち尽くしていた
駅までの道 ひとり歩く
振り返るたび 影がのびてゆく
名もない日々が 今さら愛しくて
君の言葉を 反芻してる
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