








**「紅葉の頂で、君を試す」**
朝靄に濡れた尾根道 風が冷たく指先を刺す
赤や黄金の葉が舞う中で
君の声がまだ僕を挑発する
「ほんと、バカね」――笑って消えた影
踏みしめる落ち葉の匂いが 昨日の君を思い出させる
登山道の先で 迷う僕を見下ろす秋空
「まだ夢追うの?」
挑発的に問いかけたあの瞳
僕はつい意地を張る
――まだ君の隣には届かないくせに
冷たい風が肩を押して 落ち葉が踊る
迷いも痛みも ここで燃やしてしまえと
心の奥で君が笑う
君を連れて行きたい 紅葉の頂まで
黄金の光を蹴散らして 駆け抜ける
強がりも恐れも 抱きしめたまま
夜が迫る前に 君を挑むように叫ぶんだ
鳥の声が遠く響く 僕の鼓動と混ざる
時折落ちる葉が 君の笑顔の欠片みたいで
[昨日の雨で濡れた岩肌 光を反射して眩しい
君の手を取れなかったことも
諦めきれない夢も
全部この紅葉の中に隠した
「ほら、まだ登れるでしょ?」
風が僕にそう言う
秋風に乗る想いが 胸をくすぐる
君の影に向かって 僕は一歩一歩進む
君を連れて行きたい 紅葉の頂まで
未来を遮る影も 笑い飛ばして
傷も迷いも 手放さず抱きしめて
夜が来る前に 君を挑むように叫ぶんだ
頂に立ったとき 空は燃えるように赤い
君はいないけれど
幻でもいい、ここにいてくれ
――僕はもう、逃げない
君を連れて行きたい 紅葉の頂まで
痛みも孤独も この空に溶かして
強がりだけの僕でも 君を迎えに行く
風が教えてくれた――
「まだ、君の隣には立てる」
紅葉が舞う尾根で 僕は息を整える
「さ、行くよ」――と誰もいない空に告げる
でも風が笑った
――“君はもう、ここにいるよ。”
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