








**「やさしさの約束」**
あなたが街へ 出てゆく朝は
白い息さえも 夢に見えた
「新しい世界で がんばるんだ」と
笑った瞳が 少し揺れてた
心配なんてしないでって
わたしの手をそっと離すけど
あなたの声に かすかな震え
わたし 気づかぬふりをしたの
欲しいものは なにもないの
きらめく宝石も ブランドも
あなたが元気で 笑っていてくれたら
それがわたしの しあわせなの
ひと月ごとの 手紙のなかに
知らない言葉 増えてゆくの
「きっと大丈夫 心配ないよ」
そう書くあなたが 少し遠いの
わたしの夢を 忘れたの?
二人で暮らす その日々さえ
「今はまだ…」と 遠まわしな言葉
やさしさだけが すこし切ない
欲しいものは なにもないの
だけどほんとは 欲しいのよ
電話の向こうで わたしを呼ぶ声と
「ただいま」と言う あなたのぬくもり
今日で三度目の 春が来たけど
返事はやっぱり 来なかったわ
風にたなびく 木綿のハンカチ
約束のまま 時が止まった
泣いたりしない 涙よりも
わたし きれいに 笑いたいの
忘れたくない あなたの声だけを
胸にしまって 歩いてゆくわ
欲しいものは なにもないの
思い出さえももういらない
だけどあなたに あの日あげた言葉は
今もやさしさの 約束なの
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