








**「坂道の梅」**
潮風にまぎれて 名前を呼ぶ声
春の終わりの坂道で
あなたたちは 迷いもせずに
私の場所を 空けてくれたね
手のひらがまだ 覚えてる
缶ビールの冷たさと
少し照れた ぬくもりと
ゆっくりと咲いた 坂道の梅
ひとりきりじゃ 咲けなかった
涙も笑顔も 置いてきた日々が
静かにいま 花をつける
ねぇ、帰ってきてもいいのかな
この雨上がりに
雨のしずくが 軒先をたたく
母の写真と 夕餉の匂い
誰かの代わりなんかじゃない
でもたまにね そう思ってしまうの
聞こえてくる 波の音
遠く離れた心まで
やさしく包むように
ゆっくりと育つ 家族のかたち
言葉じゃきっと伝えきれない
強がりの影に しまった想いが
風に揺れて ほどけていく
ねぇ、愛してもいいのかな
この夕暮れに
魚の骨を そっとよけるように
言えないことを 抱えたまま
だけどテーブルを囲むだけで
胸の奥が あたたかくなる
何度でも咲くよ 坂道の梅
名前を呼んでくれたあの日に
戻れなくても 歩いていける
あなたとなら 怖くはない
ねぇ、もう少しここにいて
雨が止むまで
潮風がゆれてる
「ただいま」と言えたなら
すべてが始まる気がしたんだ
投稿者 | スレッド |
---|