








**「十年目の春に」**
君がいなくなった春から
十年分の季節が 僕を通り過ぎた
教室の黒板に チョークを走らせながら
ふと 君の声が浮かんでくるんだ
「誰かのために生きてみたい」って
あの日君が 言ってた夢
今 僕が引き継いでいるみたいに
少しずつでも 君に近づけたかな
春の風が 頬をなでてゆくたび
君の笑顔が 胸に咲くんだ
教科書のすみ 名前をつづったあの文字
今も僕を導いてくれる
「生きるって 愛を渡すこと」だと
三月の終わり 君と歩いた桜並木
ひとりで訪れた あの日と同じ景色
咲きはじめのつぼみが ふいに揺れて
君が「ただいま」って言ったような気がした
帰り道 君の家の前をかよって
お母さんがくれた 温かい紅茶と
「あなたの話、彼女からよく聞いてたのよ」
その言葉が 涙に変わった午後
時は流れても 薄れないものがある
胸の奥で 今も息づいてる
どこかにいる君へと 語るように
僕は今日も ノートをめくる
“未来”の中に君を連れて
放課後の廊下 笑い声の中に
君が好きだった 春の匂い
どこにいても 君は僕の一部で
「大丈夫」って そっと囁いてくれる
十年目の春に ようやく気づいたよ
「君と過ごした日々」が 僕の根っこなんだ
失ったんじゃない 胸にしまったんだ
君がくれた “生きていく力”
ずっとここで 光ってる
窓を開けると 桜がまた
「会いたかった」と 揺れていた
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