**「潮の手紙」**

あなた、今どこにいますか。
私は今日も海沿いの道を歩いています。
波の息づかいが、まるであなたの声みたいなんです。
だから、つい返事をしてしまうんですよ――心の中で。

あなたの笑顔は　朝の潮風のように
少しだけ胸をくすぐって　消えていきます
触れたくても触れられない距離に
恋の泡が生まれては　儚く溶けてゆく
ねぇ、あなた――この想いは届いていますか

旅の途中で出会ったあなたの瞳は
青く深い珊瑚礁のようでした
私はその海に潜りたくて
言葉という貝殻を拾い集めています
それを並べて、あなたに手紙を書いているんです
潮の手紙――届くころには泡になっているかもしれませんけど

潮の手紙を風に乗せて　あなたへと流します
言葉は小さな舟のように　揺れながら進みます
届かなくても、いいんです
消えてしまうその瞬間まで
私は確かにあなたを想っています
あなた、聞こえますか――潮の音の中に。

妹が恋を語る夜、私はひとりで海を眺めました。
誰かを想うことは、痛みじゃなくて祈りなんですね。
そう気づいたら、心が少し軽くなりました。

あなたの笑い声が　波の音に溶けていきます
目を閉じると、世界がやわらかく色づくんです
「好き」って言葉は、旅の羅針盤みたいです
行く先は教えてくれるけど
帰り道は　自分で見つけるものなんですね

あなたの影を追いかけながら
私は少しずつ、自分を好きになっていきます
泡のように頼りなくても、
光を映すことはできるんですね
だから今日も歩きます――潮の道を。

潮の手紙を光に乗せて　あなたへと捧げます
言葉が波に溶けても　想いは残ります
あなたの笑顔に　また会えるその日まで
私は泡の翼で飛んでいきます
あなた、聞こえますか――潮の音の中に。

さようならじゃなくて、またね、です。
海があなたを包むように、私も祈っています。
どうか、この潮の手紙が――
あなたの夢の中で、そっと弾けますように。