
山は語らず(Soul Ballad)
kazuo
Music(音楽)
:
2025/10/11 15:25
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**「山は語らず」**
見下ろせば 霧の海
浮かぶ村も 遠い記憶
山は黙して すべてを見ている
若き日の嘆きも 恋も 塵のよう
陽の斜面で 君が笑う
振り返れば 風の音だけ
時を越えて まだこの胸に
あの夏の光が滲む
人は登り やがて降りてゆく
ただ山だけが 変わらずに立つ
何を求めてここに来たのか
空の青に 答えを探して
君の名を呼ぶたびに
雲がほどけて消えてゆく
愛も痛みも 風になる
山はただ 見つめている
雪の尾根に 影ひとつ
過ぎた日々を 抱きしめるように
鳥の声が遠くで響く
誰もいない 永遠の午後
この高さに 悲しみは似合わない
ただ静けさが すべてを包む
もし君が この風の中にいるなら
もう何も 言わなくていい
見渡す限りの 白い光
山頂で 僕は微笑む
生きてきたこと それだけが
今は 祈りになる
声は遠く、風とひとつになるように――
山は語らず、ただ世界を抱いている。
老いゆく語り手が、人生の終わりに再び山を訪れ、若き日の愛と過ちを思い返す歌。山は変わらずそこにあり、人の営みや感情のすべてを静かに見下ろしている。彼にとって山は記憶の象徴であり、永遠と無常が交わる場所。風や雲、光といった自然の動きの中に、かつての恋や喪失、そして赦しが重ねられている。やがて彼は、愛も痛みもすべて自然の一部として受け入れ、山頂で微笑む。人間の短い命と、自然の悠久を対比させながら、「生きたことそのものが祈りとなる」境地を描く静かな魂の歌である。 ...
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