








**「秋の稜線で」**
ねぇ、君に伝えたいんだ
乾いた風が枝を揺らし 落ち葉が靴の下で鳴る
君は高い空を好んで 谷の影を少し怖がってた
赤や金の山肌の中で
君の横顔は光と影の間を行き来していた
君よ、答えてよ この稜線はどこまで僕らを連れていくんだろう
落ち葉はすぐに足跡を覆い隠してしまうのに
君よ、答えてよ 風鳴りにかき消されそうな声で
僕らは笑えばいい? それとも泣いて抱きしめ合えばいい?
「ここで待つの?」
——君の声は少し高くて 木々のざわめきに溶けそうで
「いや、一緒に行く」
——僕の声は岩の影に落ちる石みたいに鈍かった
君は爪を噛む癖がある 焦ってる時ほどそれが出る
細い足で落ち葉を蹴り上げ 意地のように前へ進む
僕はただ その背中を失いたくなくて叫んだ
君よ、答えてよ 友情は鎧?それとも重荷かな?
恋は焚き火?それとも嵐の罠?
君よ、答えてよ 僕の声が谷に落ちても
心の叫びを拾ってくれる? それとも風に流すだけ?
「怖くない?」と僕が訊くと
君は、いつもの癖で首をかしげた
「君がいるなら」って あの言葉さえも
枯葉の下に埋もれてしまいそうで
風鳴りと木々のざわめきが 耳を塞ぐ
僕らの道はここで途切れるのか
それともまた重なるのか
君よ、答えてよ 人生は旅?それとも試練?
僕らの物語は始まり?それとも終わり?
君よ、答えてよ 赤く染まる未来の稜線で
僕はまだ叫んでる 「君なしじゃ、僕は僕じゃない!」
ねぇ、君に伝えたかったんだ
けれど風が落ち葉をさらっていく
君の癖も、笑い方も、怒った顔も すべて秋と一緒に遠ざかる
友情はもう道しるべにならず 恋も灯りを失って
残された僕は 冷たい稜線に立ち尽くしている
君の声も 君の影も 紅葉と一緒に散っていった
「寒いね」
——「うん、もう戻れないね」
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