








**「頂へ」**
君の声が遠く聞こえたのは いつからだったろう
目の前にいるのに 手がすり抜けていくようで
たわいもない会話の裏に潜む 沈黙の影
僕たちは同じ景色を 見ているようで見ていなかった
この山を登ると決めたのは 他でもない僕自身
けれど、いつしか君の笑顔も 重ねてしまった
「そのペースじゃ危ないよ」と 小さく笑った君
その意味を本当に知るには 時間が必要だった
信じていた 愛があれば越えられると
でもそれは 時に無理をする理由にもなる
頂(いただき)へ ただそれだけを目指して
振り返らずに 君を置いてきた気がする
登るほどに 視界は広がるけど
大切なものは 足元に落ちてた
「またね」と君が言った日 雲が流れていった
その一言の中に たくさんの"もう戻らない"が隠れてた
もっと話せた もっと寄り添えた
それなのに 登ることばかりを考えてた
選ばなかった道の先に
君の笑顔が 今も揺れている気がする
頂(いただき)へ 届かなくてもよかった
君のそばに ただいたかっただけなのに
夢の形を 自分だけで決めていた
「ふたりで登る」という意味を忘れてた
愛ってなんだろう 追いかけるほど遠ざかる
優しさと犠牲は どこで線を引けばいい?
引き返すことは 負けじゃないって
あの時の僕に 今なら伝えられる
頂(いただき)へ たどり着けなくても
この心に残った景色が 本当の証
君と歩いた日々の記憶が
僕にとって 永遠の頂なんだ
投稿者 | スレッド |
---|