**「矢切の渡し」**
霧深き江戸川 渡し舟ひとつ
静かに揺れる 水のささやき
遠ざかる岸辺に 影が揺れて
櫂(かい)のひとしずく 夜に溶けゆく
矢切の渡し 流れに身を任せ
揺れる心も 水面に映して
重ねた指先 そっとほどけても
波の記憶に 残るぬくもり
霞む町並み 灯る灯篭(とうろう)
水鏡に揺れる 面影ひとつ
風鈴の音色(おといろ)が 途切れるたび
心の迷いを そっと映す
矢切の渡し 流れに身を任せ
月の光が 行く先を照らす
触れた指先 そっと結んでも
夜明けの風に 消える幻
行き交う舟に ただ揺られながら
川の流れに 記憶をほどく
遠ざかる声も 夕闇に溶け
静かに響く 櫂の音だけ
矢切の渡し 流れに身を任せ
過ぎゆく季節 ただ見送るだけ
ともに過ごした 夜の面影が
朝日とともに そっと揺れる
霧深き江戸川 渡し舟ひとつ
消えゆく影が まだそこにある
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